たまごのある風景

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たまごのおみやげ

これは、昭和40年頃のお話です
母は時々、お客様にたまごのおみやげを差し上げていました
当時はスーパーもコンビニエンスストアもありませんでしたから、新鮮なたまごはとても喜ばれました
我が家も歩いて片道10分くらいの鶏舎まで、手提げかご持参でたまごを取りに行かなければなりませんでした
今のようなパック容器もありませんでしたから、お客様には新聞紙で代用しました
たまごを横に数個並べて新聞紙で棒状に包み、それを何本か作ったら山にしてひとつにまとめました
たまごが割れないように、新聞紙を何重にもして補強しました
母は新聞紙のインクで手を黒く汚しながら、おみやげの包みを手早くこしらえていました
その時はいつも、台所から「シュッ、シュッ、シュッ!」と新聞紙を折りたたむ小気味よい音が聞こえてきました
たまごは残り少なくなり、またお使いに行かなければなりません
でも、帰り際のお客様の「助かるなぁ」という言葉と笑顔が、ずっと心の中に残っていました

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